これまでの取り組みやセミナーでお話いただいた事や現場での
実感を元に8050問題について改めて課題の整理をしました。
8050問題の課題整理
①本人を取り巻く課題
引きこもりが長期化する事で求められる社会性とのギャップが拡大、働く意欲の低下、二次的な障害、就労への困難度が高くなる。家族内で介護等の役割を担う場合もある。相談の窓口がない、年齢や状況にあった支援がない。失業を繰り返し働く事に希望がもてない。などの悪循環が続いている。
②保護者・家族を取り巻く課題
子どもが家にいる事が常態化し、親子が共依存状態になっている。親の健康課題、高齢で介護状態など相談機関で解決しなかった経験などから相談につながりにくい。子どもの問題を家族だけで解決しようとする、世間体が悪いと感じ相談ができない。
③社会の課題
子どもの問題は家族が背負うものだという認識から相談につながりにくいケースが多い。相談に行ったが、年齢や状況により門前払いをされてしまったという経験、支援があっても当事者に届いていない社会の問題も長期化のひとつとなっている。
解決の糸口
*様々な困りごとを受けられる支援体制
8050問題にかかわりのある制度はあるが当事者に届いていません。どこに行けばどのような支援が受けられるか当事者にはわかりにくい為、どこかで誰かが状況を把握した時に必要な支援につながる仕組みが必要です。高齢化すると自ら相談窓口に行くことも難しくなる為、介護支援者との連携なども有効です。
*居場所と出会いの支援
家族が社会から孤立していく事が状況の悪化につながります。親、子それぞれに家族以外の相談できる人や安心できる居場所があることで、精神的な安定や具体的な支援につながるきっかけになります。
*生活を維持するための支援
8050の支援では、就労自立だけがゴールではないと考えます。家族の生活の維持や安定、社会とつながりのある健康的な生活、様々な家族の問題解決などを支援する事を目標にゆっくりと伴走していく支援が必要です。
この事業を通しての気づき
若者支援の現場で、引きこもりが長期化・高齢化したご家族の相談を多く受けるようになり、その対応には難しさを感じています。この事業を通して「8050問題」について専門家のみなさまにご協力いただきながら学びを進めてきました。今回の事業を振り返り、気づきのあったことを記します。
●「8050問題」は若者支援の延長線上にあるが、若者支援のようなゴール設定(就労自立へのステップ)はできないということ。
地域若者の現場では就労自立へのステップが示される事がよくありますが、8050 とは現実とのギャップがあり、一度相談にきても離れてしまうケースも多いように思います。しかし、公的な支援だけではない緩やかな社会参加や自立への支援は必要です。
●8050のゴール設定は「つながり先の確保」
セミナー講師のお話からも、8050の家族に必要な支援は既にある事がわかりました(もちろん充分ではありませんが)。しかしそのような支援は当事者家族や支援者にも届いていない、活用されていません。
必要な支援につなぐ・つながるための手立てが必要です。コーディネートする支援者の力量も問われています。対応する支援者が必要な資源を知ることができるようなネットワークも必要です。
●若者支援現場でできること、早めの介入と啓発活動
私たちは若者支援の現場で、7040・6030の若者たちやご家族と出会っています。支援を必要とする人に、少しでも早く情報を届けるとともに、8050問題やその支援について発信していく事も必要だと考えます。
「8050 問題」についての小さな取り組みですが、当事者や家族、支援者が動き出すための何か手がかりとしてこれからも継続していきたいと思います。