8050問題を考えるセミナー2020報告(2)講師 : 宮本みち子氏

「 8050問題の背景にある社会課題を考える~ 若者のアンダークラス化を防ぐために~ 」

今、日本では「支援を受ける側」の高齢者が増加すると同時に、「支援をする年齢層」の若年層に支援を必要とする人が増えている状況があります。

支援が必要な人たちを放置するのではなく、必要なサポートを受けながらでも、社会と繋がり支援をする側に立つ人を増やしていく必要があります。

では、なぜそのような状況になっているのでしょうか?

ミッシングワーカー 消えた求職者

リーマンショック以降、非婚・非正規・女性・中年期にあたる人たちのなかに、ミッシングワーカーが増えています。

ミッシングワーカーとは、消えた求職者。つまり働くことを諦めている人々のことです。

求職者の登録をしていないため、統計上失業者にカウントされていません。

そのため、この人たちの数字は今現在の失業率に反映されないのです。

ミッシングワーカーは先進国共通の現象のようですが、日本においても例外なく深刻化しています。

非正規の女性の問題

さらに非正規の独身女性たちの問題があります。

コロナ以前から未婚の女性の非正規雇用の割合は上昇傾向にあり、しかも中年期に及んでいます。

調査では「仕事」「老後の生活」「健康」「家族の世話・介護」「独身であること」などが現在の悩みや不安として挙がっています。

さらに2020年初頭から始まったコロナ禍に於いて、すでに6月の非正規労働者数は前年同月比で104万人減。女性がそのうち6割を占めています。

特に中年前期に相当する35歳~44歳の女性が25万人減。最も大きな減少率でした。

コロナ禍中で子どもの在宅時間が増え離職せざるを得なかった人、売上が大幅に減少したサービス業に従事していたため解雇された人。

いつ終わるともしれないコロナ禍は、彼女たちのアンダークラス化(下層化)を加速させています。

共生保障という解決方法を考える

この事態を打開するために、何が必要なのでしょうか。

政治学者の宮本太郎氏によると、この超高齢者社会を支える側の現役世代の多くが、複合的な困難を抱え、経済的に弱体化し、支え手としての役割を果たせない局面に来ている。

このような人々を支援し、「支え合い」を支えることに公的な制度の課題を定めていくなら、新たな展望も開けると提言しています。

これが、共生保障という考え方です(宮本太郎著『共生保障〈支え合い〉の戦略』岩波新書、2017年)。

今の社会状況では、ひきこもりをはじめとする生活の諸課題が、本人やその家庭の自己責任として捉えられ、放置されがちです。

これでは孤立し困窮する人が増えていくのは当然です。

解決できない原因は社会という環境の側にこそ存在しているのです。

当事者やその家庭は、「仕事」「衣食住」「社会参加」「関係性の構築」などの不足に悩んでいます。

その解決に向けて社会が動き、また当事者自身が主体的に関与できる仕組みが「共生保障」です。

個々の生活の質を高める新しい公共性の実現をめざすことが必要です。

生き延びるためのコミュニティ形成

『共生保障』の中で宮本太郎氏は、持続性のあるコミュニ
ティの枠組みとして、生きがたさをもつ中高年世代たち
でも生きられるコミュニティを作ることが求められている
と語っています。

愛知県豊中市の取り組みのように、初めからフルタイムで就労が難しい人でも、行政のサポート例えば企業見学・就労後のサポートなどの丁寧な出口支援があれば、人手不足の企業とマッチングして雇用の希望が双方叶うという好例もあります。

社会的企業の普及や、新たな住宅政策も想定されます。

具体的な手立てとしては、市民活動を育て、地域課題への取り組みを行うNPOを担い手にすることは重要です。

また、企業内での市民活動を発展させる取り組みなどが考えられます。

次回は「8050問題と支援制度」という視点から
公益財団法人よこはまユース 常務理事・事務局長 巻口徹氏を講師にお迎えして開催された
「8050問題と生活困窮者自立支援制度」
のセミナープレビューになります。

タイトルとURLをコピーしました