8050問題を考えるセミナー2020報告(5)講師 : 相川 裕里子 氏

生きづらさを抱える若者と年金について「障害年金のあらまし」

  • 講師 : 社会保険労務士事務所AIコンサルティング 特定社会保険労務士 相川裕里子氏
  • 2020年12月5日(土)

数年前からひきこもりの支援をされている方からのご紹介で、ひきこもりの方の障害年金の請求をすることが多くなっています。

うつ病、躁鬱、統合失調症など、発達障害の診断を受けた方から、こういう状況って障害年金の対象になるの?というようなご相談も増えています。

親御さんからご依頼のあることも多いですし、10代からひきこもっていて、30歳前後~半ばぐらいまでに、「このままじゃいけない」とご本人が自ら私のところに電話をかけてきて、「障害年金ってどうなんですか?」という相談を受けるようなこともあります。

セミナーのポイント

障害年金とは

年金は保険制度。働けなくなり、お金を稼ぐことができな
くなったという場合であれば支給の対象になる。

  • 高齢者になって働けないとき→老齢年金。
  • 家族の働き手が亡くなったとき→遺族年金。
  • 病気やケガで働けないとき→障害年金。

障害年金は20歳から原則65歳になるまで請求ができる。

障害者年金なのか?

正式名称は「障害年金」国が定めている障害の状態というのは、必ずしも障害者手帳を持っている人を指すのではなく、日常生活に不自由がある状態を言う。

日常生活を送るのにちょっとサポートが要るとか、常にサポートが要る。

サポートには「お風呂にはいったら?」といった声かけも含みます。

あるいはすごく軽い人だと、日常生活にサポートは要らないのだけれど、フルタイムで働くことができない。

或いはできる仕事が限られている、軽い仕事だったらできる状態です。

20歳前からの病気・けがでも請求はできる

生まれつきの障害である知的障害の方や、20歳前からの病気がある方やケガをした方なども請求の対象になります。

20歳になった時点で日常生活を送るのに不自由な状態があれば、障害年金の請求ができるようになっています。

20歳の時点では不自由さが軽く、その時は請求できなかった。

あるいは請求して不支給という結果だとしても、その後どんどん悪化していったという場合は、65歳までであれば何回でも請求にトライできます。

不自由さや症状が重くなった時点で請求したら受けられたというケースもあります。

障害年金に必要な診断書

申請に必要な医師の診断書は8種類あります。

  1. 聴覚・鼻腔・平衡・咀嚼・嚥下・言語
  2. 肢体
  3. 精神
  4. 呼吸器
  5. 循環器
  6. 腎臓、肝臓、糖尿病
  7. 血液・造血器
  8. その他

特にひきこもり状態の方に関係のあるところでは、うつ病、躁うつ病、統合失調症、など精神病と発達障害は障害年金の対象になります。

また障害年金は病名より病状が重視されますが、精神疾患については、病状も病名も見られます。

病名が強迫性障害、パニック障害などの不安障害、または神経症であれば原則的には対象にならないなど、その方の個別の状況で見ていきます。

等級について

(詳しくは年金機構HPの「障害認定基準」をご参照ください。)

1級は活動範囲が寝室。労働できない、日常生活で常に援助が必要。

2級は活動範囲が家屋内。労働できない。日常生活で援助が必要なことがある。

3級はフルタイム労働に体が耐えられない。軽労働しかできない。日常生活はできる。

※3級で年金が支給されるのは初診日に厚生年金に加入している人

大切なこと

備えましょう。

障害年金は書類審査だけで決まってしまいます。

ポイントは初診日です。

初診日のわかる証明書類は取っておきましょう。

初診前日の年金保険料の支払い状況を見られます。

病院へ行ってから納付手続きしても「後だしジャンケン」となり認められません。

受診前に保険料の状況を調べて必要な手続きをしておきましょう。

払えない時は免除、猶予の手続きをしましょう。

未納はぜったいに避けましょう。

できるならコミュニケーションがきちんと取れるお医者さんに診てもらいましょう。

日常生活でどのような困りごとがあるのか、医師が踏み込んだ診断書を作ってくれないと、障害年金を受けられる重さでも不支給になる事があります。

コミュニケーションをしっかりして、日常生活にまで踏み込んで聞いてくれる医師にかかることをお勧めします。

障害年金請求にかかる相談先は年金事務所、街角の年金相談センターです。

私の事務所でも初回は電話での無料相談を行っています。

セミナーではより具体的に詳しく事例等を含めてお話いただきましたが、ここでは簡単な概略のみ記載しています。詳しくはご著書を読まれるか、直接ご相談ください。


相川裕里子氏 ご著書の紹介

「最強の社会保障」と言われる「障害年金」。多くの人が誤解をしているが、障害年金は、「障害者手帳」をもつ人だけのものではない。マンガと図解、やさしい講義調の説明で、障害年金のポイントを解説。心身の病気やケガで働けなくなった人、家族を支える本。

世界一やさしい障害年金の本 (日本語) 単行本 ‒ 2018/1/30
相川 裕里子 (著), 春原 弥生 (イラスト)

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